学生向けのアパートの一室。 冬野さざんかの下宿であり、〆切まじかの卒論を手伝う為にＣｏｚｙもいる。 昼夜をとわず続けられてる作業のせいかさざんかの顔には疲労が色濃い。 こたつにはノートパソコン二台、さざんかと広史それぞれのもの。 足がぶつかるからと隣り合った二辺で並ぶように打ち込みが続いていた。

　「せんぱーい、あとこれ〜・・・」
　「打ち込みか、了解っと、ちょっと寝とけもう。」
　「・・・・・・」
　「打ち込みはやっとくって、ほら考察はおまえにしか書けないんだから。寝ろ。」
　「・・・」

　こたつに突っ伏すさざんか。

　「・・・うー、うるさいぃー、かちゃかちゃしてるー・・・」
　「んー？」
　「うーるーさーいーのー」
　「耳栓でもしとく？」
　「じゃー塞いでー、私のみみー、ねー」
　「はいはい、もうちゃんと寝ろって」

　後ろに倒れるさざんか。じりじりとこたつに埋まっていく。 当たる足を構いもせず狭いこたつで身体をのばす。 納まりきるはずも無く足先が向こう側へ突きぬけた。
　「わ、寒」
　いそいで足を引っ込めた。間をおかずまぶたが下がる。

　「だからってそこで寝るなって。 布団しいてくるから、こっちか？」
　「・・・んー、ありがとーございまー、すー・・・」
　「あーもー」

　「ちょっとだけだから、ほら動けって、ちょっとだけ起きてさ」
　「・・・起こしてくださーいー」
　「ったく」
　「えへへー」
　「起きる気ないだろ」
　「だっこー、だっこー」
　「・・・」
　「先輩かおまっかー、えへへー」
　「・・・」
　「・・・」

　掛け布団をずらす、さざんかを下ろす、布団を掛けなおす。

　「・・・えへへ」
　「はい、寝ーろ。」
　「んー」
　「手、はなせって、ほら」
　「・・・んー」
　「・・・あのー、さざんかさん？」
　「・・・」

　寝たようだ。力なく握り締める手を丁寧に解き布団に押し込む。 「やー」と聞こえたのは寝息か。顔を近づけようとしてとどまった。 まだ出来る作業が残っている。

　「さてと」

　また、さざんかの筆跡を読み取り下書きを打ちみはじめた。