お待ちかねの日曜日。

　早くから起きていろいろと準備してた。７時に先輩がきて一緒に朝ご飯。 冷凍しておいたご飯を解凍して冷蔵庫からおかずだして、 がんばってお味噌汁もつくったのだけど今日のはちょっと味が濃すぎたみたい。 先輩はご飯だけじゃなく、くる途中で買ったパンまで食べてた。 それから二人で片付けてお出かけの準備。 気のせいか先輩もいつもよりいい服を着てるみたいな気もするし。
　歯を磨き終わってから先輩がまた洗面所にたってた。 手元を覗いてみたらＴ字カミソリもって神妙な顔をしてるから聞いてみる。

　「あれー、ひげ、そっちゃうんですかー？」
　「まー、お出かけだし」
　「言ってくれれば手伝いますよ、抜くの。」
　「いや、あれは、ちょっともう」

　前に抜いたほうが手触りがいいからってひげを全部抜こうとしたことがあって、 その時は痛いからって止めさせられちゃったんだけど。 今から思うとすごい姿勢だったからだと思う。 馬乗りになってあごを押さえつけてたんだから、まったく。
　頬があつくなるのを感じて言葉が切れた。

　「考えてみれば二人っきりでどこか行くって、 コンビニか食べ物屋さん以外じゃはじめてかなー。」
先輩は決心したのかカミソリを動かしはじめてた。 鏡の中で泡がそがれていく、きっちり剃った顔見るのって久しぶりかも。

そうか、そういえばほとんど大学で会って下宿ってパターン。 研究室とかの飲み会の帰りに送ってもらったことはあったけど、 二人だけでどこかに行くのは初めてだ。
　「ってことは先輩、デート、ですか？」
　「デート、かねえ」
　「デートですよ」
　「デートか」

　そうだ、デートだ。 思いつく限りこれまでデートらしきものをした覚えがない。ということは、
　「二人の初デートですよ」
　「ん」
　「やっぱ手とかつないじゃったり」
　「うん」
　「夕映えもあざやかな海を見おろす公園で・・・」
　「うん」
　「寄り添う影と影はやがて夜の町に！」
　「うん」
　って先輩ちょっと！
　「な、なにいってんですか！」
　思わず先輩の背中をたたいちゃった。
　「う」

　「あ・・・」
　「バンドエイドか、オロナインか、なんか」

　「すいませんすいません、いまちょっとすぐに！」
　「急がなくていいから、うん」